エグゼクティブに求められる“俯瞰力”──組織を強くするための視座の転換

敬愛なる皆さま
お立ち寄りくださり誠にありがとうございます。
本日は複数のご相談から共通する内容をQ&Aの形で
お答えさせていただきます。
Q.
「私は50代の女性管理職です。
長い間、男性社会の中で肩を並べて走り、誰から丁寧に教わるでもなく
自ら試行錯誤しながら仕事を身につけてきました。
ところが最近、部下の世代は少し厳しい言葉をかけただけで
業務が滞ってしまい現場が進まなくなることが増えています。
価値観のギャップに疲弊し、結局責められるのは管理職である私たち。
日本の組織はこのままで良いのか、と嘆きたくなる日々です。
私はどう向き合えばよいのでしょうか?」
A.
おっしゃるお気持ち、深く拝察いたします。
これまで現場を率いてきた世代の方々は、
厳しい環境の中で「背中を見て覚える」ことを自然と求められてきました。
そうして培われた粘り強さや実行力は、
まさに今の日本の企業を支えてきた土台そのものです。
一方で、若い世代は「環境や人間関係の安心感」があって初めて
力を発揮する傾向が強くあります。
そこには良し悪しではなく「社会構造の変化」が大きく影響しています。
1. 部下を責めるのではなく、組織の構造を俯瞰する
現場で「厳しい言葉が通じにくい」というのは
個人の資質ではなく、
社会全体の教育環境や価値観の変化によるものです。
管理職として大切なのは
部下を責めるのではなく、
「なぜこのような反応が生まれるのか?」を
組織的・構造的な視点でとらえることです。
組織の中で人材がどう成長できる仕組みをつくるか
─その責任を担うのが管理職の新たな役割といえるでしょう。
企業を率いるエグゼクティブ層(管理職を含む)は、
日々の意思決定と成果責任の狭間で、大きな重圧を抱えています。
特に近年は「価値観の違う世代をどう束ねるか」という課題が、
ますます鮮明になってきました。
2.世代間ギャップが突きつける現実
繰り返しになりますが
若い世代の中には、
少し厳しい言葉をかけられただけで
業務に支障をきたすケースが散見されます。
一方で、50代前後の女性エグゼクティブは
荒波を自ら乗り越えてきた世代。
先輩の背中を見て必死に学び、
時に叱責を受けながら仕事を身につけてきました。
この価値観の差は決して「どちらが正しいか」の問題ではありません。
しかし現実として、
責めを負うのはエグゼクティブ=管理職層であることが多いのです。
3. 感情的にならず、組織を俯瞰する度量を持つ
多くの管理職が
部下や上司の一言一句に振り回され
感情的に反応してしまいます。
しかし、
エグゼクティブに本当に求められるのは
「組織を俯瞰する度量」です。
◎ 部下の未熟さを責めるのではなく、
組織的課題やビジネスモデルの欠陥に目を向けること
◎ トップ層に改善を働きかける「気概」を持つこと
◎ 一時の感情に流されず、構造的な問題を見抜く力を養うこと
これこそが、
組織を弱小化から救う道だと私は考えます。
4.今こそエグゼクティブに求められる役割
経営幹部や管理職は、
単に「現場を回す」存在ではありません。
■組織を未来に導くリーダー
■異なる世代を橋渡しする調整役
そして、
■部下の可能性を引き出す育成者
つまり、
組織を俯瞰し長期的な視点で動く存在です。
かつては「背中を見て学べ」が通用しました。
ですが現代では「学ぶべき背中」に触れる機会が圧倒的に減っています。
そのため、
次世代の育成は属人的な教え方ではなく、
再現性のある仕組みづくりへと進化させる必要があります。
つまり、
管理職が疲弊しながら一人で部下を抱えるのではなく、
組織全体で若手を育てる体制をどう整えるか。
この舵取りこそ、今の管理職世代が担うべき重要な役割です。